こんにゃくの品種
こんにゃくの品種は、既存の品種と育成品種に大別される。
既存の品種は、在来種、支那種、備中種に分けられ、育成品種は、はるなくろ、あかぎおおだま、みょうぎゆたか、みやままさりに分けられる。
既存の品種
在来種
日本国内で古くから栽培されてきた品種です。栽培される地域によって赤茎、白ヅル、平玉、和玉、大玉種などの地方名で呼ばれてきましたが、現在は在来種という名称に統一されています。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は水平となる場合が多いが、気象、栽培条件によって半立型になることがある。小葉は幅が広く(広葉型)大きい。また葉全体の面積も大きい。葉色は淡緑色。葉柄の斑紋は小さく、散在している。 球茎はやや扁平状で、表面には条溝が多く、皮色は最も濃い。生子の形はやや長めの球状で、表面に節状の横しわが多い。
・生態
早生で、球茎の肥大性は並、生子の着生量は最も少ない。荒粉歩留、精粉歩留及び精粉の粘度はいずれも高く、品質的には最も優れており生産物の取引価格は高い。 しかし葉枯病、根腐病に極めて弱く、また亜鉛、苦土等の要素欠乏症、低温による黄化症状、高温強日射による日焼、風害などの気象災害も発生しやすいので、栽培が最もむずかしい品種である。
・適地
真夏の気温の上昇が少なく、日照時間が比較的短い山間地で、地力に富み、古くからコンニャクの適地といわれているような地域に限られ、それ以外の所では各種の病害の発生や、障害を受けやすく、生産性の低下にとどまらず、繁殖性も一層低下して再生産が困難となる場合が多い。
支那種
南洋種、ビルマ種などとも呼ばれます。大正15年ころ中国から原料用として輸入されたものを植えたことが栽培の発端であるといわれています。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は立型、小葉は広葉型で小さく、数が多い。葉色は濃い。葉柄は表面に小突起、小白斑があり、在来種のように平滑ではない。また斑紋が極めて大きく、互いに連続して色も濃いので、葉柄全体がくすんだ黒色に見える。
球茎は球状に近く、表面には条溝が少なく、皮色は淡い。吸枝には離層が形成されないまま生子として利用されるので、生子の形は頭部がやや肥大したへら状のものが多い。
・生態
最も晩生で、出芽期はおそいが、出芽して開葉するまでの期間が短いので開葉期は在来種なみである。球茎の肥大性は極めて高く、生子の着生量はもっとも多い。荒粉歩留はもっとも低く、このため生いもからの精粉歩留も低くなる。しかし荒粉からの精粉歩留や精粉粘度は高い方である。
高温、強日射、土壌の過湿や乾燥、風害などの気象障害に対しては、もっとも強く、葉枯病、根腐病にも強いことから、強健性の品種といえる。しかし、いったん腐敗病にかかると病状の進展および周辺株への伝染がはやく、また球茎まで腐ることから被害はもっとも大きくなる。また貯蔵中に腐敗したり、生子がしなびやすいことなどの欠点を持つ。
・適地
晩生であることから、秋おそくまで生育でき十分に球茎が肥大し、生子も充実できる低標高地帯に適している。
逆に初霜の早い山間地域では生育を全うできないため、収量、品質、種いもの貯蔵性が低下して不利である。また腐敗病の防除が重要となるため、降ひょうや台風等の気象災害が少なく、薬剤散布の便も考慮して圃場を選ぶことが大切である。
備中種
栽培される地域によって青茎、黒ヅル、長玉、石玉などの地方名があります。備中種という名称は関東地方でつけられたもので、在来種とともに古くから国内で栽培されてきた品種です。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 |
・形態
草型は半立型から水平型を示す。小葉は長葉型で大きいのが特徴であるが、数少ないので葉面積は小さい。 球茎の形は高年生では在来種に似ているが、低年生では縦長の円筒状である。
枝痕が球茎の部分に数多く集まり、やや隆起している点が在来種とは異なる。生子は在来種より球状であり、節状の横しわが少ない。
・生態
中生であるが、出芽期、開葉期は早い。球茎の肥大性が高年生になると著しく低下するのが特徴である。また、球茎中のマンナン含有量は極めて低く、マンナン粒子も小粒のものが多いため、精粉歩留や精粉の粘度は低く、取引価格はもっとも安い。
生子の着生数が多く、繁殖性は在来種にまさる。病害や気象災害に対しても在来種より強い傾向が認められる。
・適地
在来種と同じであるか、やや気温が高く日照の強い地域でも栽培できる。
育成品種
はるなくろ(こんにゃく農林1号)
群馬県農業試験場で支那種を母とし在来種を父として交配し育成したもので、昭和41年に命名、登録されました。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は立型、小葉は広葉型でやや大きく、数が多い。葉色は濃い。葉柄の表面に小突起、小白斑を有するが、小白斑は支那種より少ない。葉柄の斑紋は極めて大きく連続しているため、葉柄全体がくすんだ黒色にみえる。このように地上部の形態は支那種に酷似しており、区別することは難しいが、見分ける場合には小葉がやや大きく、葉のつやがよいことと葉柄の小白斑が少ないことなどが目安となる。
球茎の形は在来種ににてやや扁平球状であるが、低年生や高年生でも肥大が良い場合は球状に近くなる。表面の条溝は在来種よりも少なく、皮色もやや淡い。生子の形は長めの球状で在来種に似ているが、表面の横しわが少なく、皮色が淡いなどの点で異なる。
・生態
中生で、球茎の肥大性は各年生を通じて高い。生子の着生数は並であるが、在来種よりも大粒である。
精粉歩留は在来種と支那種の中間、荒粉からの精粉歩留は支那種よりやや低い。 日焼、黄化症状などの気象災害に対しては在来種より強い。腐敗病、乾腐病に対しては並であるが、葉枯病と根腐病に弱い欠点を持つ。
・適地
標高200m〜400mの中山間地帯。400m以上の地帯は低温年の場合、球茎の肥大、生子の充実が著しく不良となるため不向きである。土壌条件として軽石、小礫などを含み排水が良好であることが特に根腐病の被害を少なくする上で重要である。
あかぎおおだま(こんにゃく農林2号)
群馬県農業試験場で支那種を母とし在来種の1系統である金島在来を父として交配し育成したもので、昭和45年に命名、登録されました。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は水平型で、葉柄の長さの割合に対し葉身が長いことが特徴である。小葉は広葉型で小さく、数が極めて多い。葉色は6品種の中でもっとも淡い。葉柄の表面に小突起、小白斑を有する。斑紋の大きさは中間で、色はやや淡い。
球茎の形はやや扁平であるが在来種より丸みがある。生子の形は長い棒状で、わずかに球状のものも含む。球茎、生子とも表面に条溝が少なく、皮色は在来種よりもやや淡い。
・生態
中生。萌芽性がよく、出芽期、開葉期が早い。
球茎の肥大性は各年生を通じて高く、特に高年生での肥大が優れる。球茎の水分含有率が高いため、荒粉歩留は支那種についで低いが、荒粉からの精粉歩留は極めて高く在来種以上であり、精粉の粘度も強い。
生子の形が長い棒状であるため、収穫直後に人為的に追熟処理(キュアリング処理)を行う必要がある。
黄化症状などの低温障害に対しては強いが、高温干ばつ下では日焼けが多発するのが欠点である。
葉枯病に対してはもっとも強く、根腐病にも在来種と支那種との中間程度の強さを示す。しかし腐敗病には強くない。
・適地
標高300m〜600mの中山間から山間地帯。600m前後の高標高地ではポリエチレンフィルムによるマルチ栽培を行うと作柄が安定する。低標高地で日焼けが発生しやすい圃場では不向きである。
みょうぎゆたか(こんにゃく農林3号)
群馬県農業試験場で支那種の自殖育成系統である群系26号を母とし支那種の1系統である富岡支那を父として交配し育成したもので、平成9年に命名、登録されました。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は立型。小葉は広葉型と長葉型の中間型で小さく、数が多い。葉色は濃い。葉柄は太く、地色が淡紅で、小突起及び小白斑を有するが支那種、あかぎおおだまほど多くない。斑紋の大きさ、色及び分布は中間であり、輪郭は鮮明でない。
球茎は丸みを帯びた中間型である。表面には条溝が少なく、皮色は濃くやや褐色を帯びている。生子の形は棒状、へら状が多いが、離層を形成したものもあり、1年生着生生子では半数程度が球状となる。生子の皮色は濃い。
・生態
支那種並の晩生。萌芽が遅いため、出芽期、開葉期は遅れる。
球茎の肥大性は各年生を通じてはるなくろ並で、支那種、あかぎおおだまに比べると低い。球茎の充実度が高いため荒粉歩留、精粉歩留とも在来種並に高く、精粉の粘度も高い。精粉収量は支那種、はるなくろを上回る。生子収量が多く、増殖性は高い。
低温による黄化症状、高温干ばつによる日焼け等気象障害に対しては支那種並に強い強健性の品種である。
葉枯病、根腐病に対しては支那種並に強く、腐敗病に対しては在来種並に強い。乾腐病に対してはフザリウム=オキシスポラムによるものには従来品種より強いが、フザリウム=ソラニによるものには弱い。
・適地
標高100m〜300mの平坦地から中間地帯。300m前後の中間地帯では晩生のため収穫時期が遅くなることから、葉枯病や根腐病の発病の多い地区や圃場に限定する。
みやままさり(こんにゃく農林4号)
支那種を母、備中種を父とした群系55号を母とし、在来種を父として群馬県農業試験場で交配し育成したもので、平成14年年に命名、登録されました。
草型 | 小葉 |
葉柄の斑紋 | 球茎と生子 |
・形態
草型は半立型。小葉は、形が円葉と長葉との中間葉、大きさは中で、数も中である。葉色は緑。葉柄の地色は淡緑で、葉柄白斑および小突起はあるが少なく、斑紋の大きさは小〜中でその分布は点在である。
球茎の形は扁球で、色は褐色である。主芽のほう色は紫紅で、他品種より濃い。吸枝痕は球茎表面に分散し、一部球茎内部へ陥没したものもある。生子の形は球状であるが、高年生になると球状比率は低下する。生子の皮色は褐色である。
・生態
萌芽速度が遅く、出芽期、開葉期とも晩である。成熟期は10月中旬であかぎおおだま並の中生である。1年生に見られる2次葉の発生は少ない。
葉枯病、根腐病に対しては支那種並みに強く、腐敗病には在来種並みに強い。フザリウム=オキシスポラムによる乾腐病には弱〜中である。病原性の不明な亀裂症状の発生はあかぎおおだま程度で、特に多くはない。
球茎収量はあかぎおおだま並に多く、精粉収量ではあかぎおおだま以上である。生子収量は1年生でやや少なく、2年生以上でははるなくろと同等で、あかぎおおだまより少ない。これは1個重が小さい球状生子が多いためであり、生子着生数はあかぎおおだまより多い。
荒粉歩留はあかぎおおだま並〜やや高い。荒粉からの精粉歩留は在来種、あかぎおおだまより10%程度高く優れる。このため、生芋からの精粉歩留は在来種より低いが、あかぎおおだまより15%程度高い。精粉の粒子組成は大粒の割合が高い。精粉粘度はあかぎおおだまよりやや低いが、在来種、はるなくろより高い。
・適地
栽培適地は温暖地で標高100m〜600mの平坦〜山間地域である。
群馬県農業技術センターこんにゃく特産研究センター
及び群馬県農業改良協会に帰属します。